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災害時及び災害からの復旧プロセスにおける深層多層防御の実施効果について

要約
災害時及び復旧プロセスにおいて、重要インフラを複合災害(自然災害とサイバー攻撃)から守るための方策を比較整理します。 IEC 62443ベースの深層多層防御とフィジカルAIを組み合わせることで、 物理法則に基づいて不正な操作をリアルタイムで拒絶し、 安全な復旧(サイバー・フィジカル・レジリエンス)を最短で実現させます。 電力インフラや製造ラインでの具体的なユースケースも解説します。

自然災害という日本固有の物理的リスクと、その混乱に乗じたサイバー攻撃(複合災害)への備えは、重要インフラの継続性において極めて重要な視点です。

「IEC 62443ベースの多層防御」と「フィジカルAIを組み込んだOTセキュリティ」が、災害発生時のサイバー攻撃に対してどのような決定的な差を生むのか、比較整理しました。

自然災害発生時のサイバー攻撃リスクの想定

大規模災害時には、以下の「隙」が生まれます。

  • 物理的な脆弱性:
    通信網の断絶によるバックアップ回線への切り替え(セキュリティが手薄な場合がある)。
  • 人的リソースの枯渇:
    運用監視要員が被災、または復旧作業に追われ、サイバー攻撃の予兆リスクを見落とす。
  • 物理的セキュリティの低下:
    建物の損壊により、本来制限されている物理エリアへのアクセスが容易になる。
  • 復旧プロセスにおけるチェック能力の低下:
    被災後の復旧プロセスにおけるリスクチェックの不整備からくる「だろう判断」による二次サイバー被害。

深層多層防御の有無による比較

災害復旧(Disaster Recovery)フェーズにおいて、攻撃を受けた際のシナリオを比較します。

項目深層多層防御(Defense in Depth)未実施深層多層防御 + フィジカルAI 実施済み境界防御の突破境界(IT/OT間)を突破されると、内部ネットワークを自由に移動(ラテラルムーブメント)される。ゾーン(Zone)とコンジット(Conduit)の分離により、一部が侵入されても被害を特定区画に封じ込める。攻撃の検知シグネチャベースの検知に頼るため、災害時のイレギュラーな通信パターンに紛れた攻撃を見落とす。フィジカルAIが物理量(圧力、温度、電流等)と制御信号の整合性をリアルタイム分析し、不正な操作を即座に遮断。安全計装(SIS)制御システム(BPCS)と安全計装が論理的に分離されていない場合、物理的な事故が直接誘発される。IEC 61511/62443に基づき、安全計装が独立して機能する。サイバー攻撃による異常操作があっても、安全側に停止(フェイルセーフ)させる。復旧プロセスデータの完全性が保証されず、どこまでが正常な設定か不明なため、復旧に多大な時間を要する。安全な製品開発環境(Secure by Design)の履歴に基づき、信頼できるバックアップから迅速な整合性確認と復旧が可能。

産業用ネットワークシステム設計とフィジカルAIの相乗効果

特に注目すべきは、「フィジカルAI」による動的な防御です。

  1. 物理現象との整合性チェック:
    地震直後、センサーが異常値を示す中で、サイバー攻撃者が「バルブを閉じる(または開ける)」という偽のコマンドを送ったとします。フィジカルAIは、現在の地震加速度や流体挙動の物理モデルと照らし合わせ、そのコマンドが「不自然(悪意がある)」と判断すれば、システムを強制的に安全モードへ移行させます。
  2. サイバーレジリエンスの実現:
    単に「守る」だけでなく、攻撃を受けても「機能を維持しながら立ち直る」ことが可能になります。多層防御があれば、ネットワークの一部が破壊・侵入されても、残りのセグメントで最小限の重要インフラ機能を維持し続けることができます。

結論

自然災害という極限状態において、従来の境界防御だけでは限界があります。

IEC 62443に基づく開発環境の堅牢化 + 深層多層防御 + フィジカルAIによる物理的検証を組み合わせることで、災害時の混乱を突いた悪意ある操作を「物理法則の観点」から拒絶できるようになります。これが、日本における真のサイバーレジリエンスの形と言えます。

特に「電力インフラ」と「製造ライン」の2つの具体的なユースケースを想定し、フィジカルAIがどのように深層多層防御の最後の砦として機能するかを解説します。

1. 電力インフラ(送配電システム)におけるユースケース

大規模地震発生後、一部の送電網が物理的に切断された混乱期を狙ったサイバー攻撃を想定します。

攻撃シナリオ

攻撃者が制御ネットワーク(SCADA)に侵入し、変電所の遮断機(ブレーカー)に対して、復旧を妨害するための「一斉開放コマンド」を偽装して送信する。

フィジカルAIによる防御

  • 物理量の整合性確認:
    フィジカルAIは、系統内の電圧、周波数、および位相角のリアルタイムデータを監視しています。
  • 判断:
    「地震による停電範囲」と「送られてきた遮断コマンド」を照合。物理モデル上、その区画を切り離す必要がない(または切り離すと広域停電=ブラックアウトを招く)と判断した場合、コマンドを「異常」としてブロック、またはオペレーターに緊急アラートを発信します。

2. 化学・プラント(製造ライン)におけるユースケース

津波被害により一部の冷却システムがダウンした直後、プロセス制御システム(BPCS)が乗っ取られた場合を想定します。

攻撃シナリオ

攻撃者が安全計装システム(SIS)の設定を書き換え、異常高温・高圧になっても緊急停止(シャットダウン)が作動しないように「バイパス」を設定。その上で、反応炉の圧力を上昇させる操作を行う。

深層多層防御の役割

  • ネットワーク分離(IEC 62443):
    まず、IT網からOT網への侵入を多層のファイアウォールで遅延させます。
  • フィジカルAIの介入:
    反応炉内の化学反応速度、温度上昇率、および圧力変化の相関関係をAIが常時シミュレーションしています。
  • 防御の実行:
    制御信号が「正常」を装っていても、物理的なセンサー値が爆発リスクのしきい値に近づいていることを検知。ネットワーク経由の制御をオーバーライド(優先回避)し、物理的な緊急放圧弁を直接作動させるなどの「自律的な安全確保」を行います。
  • 現場の実行システム防御能力維持:
    計装制御システムや工場の生産システムの構造に適合したIEC62443-4-1/-4-2及びIEC62443-3-3要件実装の深層多層防御設計を実施することで、現場の様々な安全や環境保全対策を維持しながら生産を維持する機能をサイバー攻撃から守ります。

但し、計装制御システムや工場の生産システムが災害からの冗長化及びバックアップ対策や耐震対策や津波対策などから守られていることが前提条件となります。

3. フィジカルAIの実装モデル:デジタルツインとの融合

フィジカルAIを効果的に機能させるには、以下の3つの階層での設計が必要です。

  1. エッジ階層(リアルタイム防御):
    PLC(プログラマブルロジックコントローラ)の近傍で、ミリ秒単位の制御信号と物理法則(オームの法則、ベルヌーイの定理など)の乖離をチェック。
  2. フォグ階層(相関分析):
    複数の装置間のデータの整合性を確認する。例えば「ポンプAが止まっているのに、流量計Bが流体ありを示している」といった論理矛盾を検知する。
  3. クラウド/センター階層(モデル更新):
    過去の災害データや最新の脆弱性情報を学習し、エッジ側の検知モデルを常に最適化。

導入に向けた次のステップ

このような高度なレジリエンスを実現するためには、まず現状のシステムが「ゾーン(Zone)とコンジット(Conduit)」に正しく分割されているかのアセスメントが必要です。

次に、発電所、特に日本の電力インフラは、自然災害(地震・津波)とサイバー攻撃が重なる「複合災害」に対して最も高いレジリエンスが求められる領域です。

IEC 62443準拠の深層多層防御フィジカルAIを、発電所の制御システム(DCS: 分散制御システム)に適用した場合の具体的な効果を整理しました。

発電所制御システムにおける「深層多層防御」の5つの決定的な効果

1. 物理的な隔離を補完する「論理的な要塞化」

発電所内は通常、タービン制御、ボイラー/原子炉制御、送電管理などの「ゾーン」に分かれています。

  • 効果:
    災害復旧時に、一部の通信ラインが物理的に損傷し、やむを得ず暫定的なネットワーク構成をとる場合でも、IEC 62443-4-2準拠のコンポーネントが「不正なプロセス起動」や「メモリへの異常アクセス」を個別に阻止します。
  • メリット:
    ネットワークの境界が曖昧になる緊急時でも、個々の制御装置(PLC/IED)自体が自己防衛能力を持ち続けます。

2. 「安全計装システム(SIS)」の独立性と多層防御

発電所には、DCSとは別に、爆発や破損を防ぐためのSISが存在します。

  • 効果:
    FR7(リソースの可用性)に基づき、SISの制御フローを他の通信から完全に優先・分離します。
  • メリット:
    サイバー攻撃者がDCSを乗っ取り、タービンの過回転を誘発しようとしても、独立して保護されたSISが物理的に燃料を遮断し、大事故を未然に防ぎます。

3. フィジカルAIによる「偽のセンサーデータ」の看破

災害時はセンサーの故障とサイバー攻撃による「データ改ざん」の区別が困難です。

  • 効果:
    フィジカルAIが、発電機の回転数、蒸気圧、温度などの相関関係を物理モデル(熱力学・電気工学)で常時解析します。
  • メリット:
    攻撃者が「正常なデータ」を偽装してシステムを操作しようとしても、物理法則に反するわずかな不整合を検知し、自動的に安全モードへ移行させます。

災害復旧プロセスにおける具体的なメリット

発電所がクラウドや広域網と連携して復旧を進める段階での効果を整理します。

復旧フェーズ深層多層防御+フィジカルAIの効果防御能力の維持1. 被災状況確認SBOM/VEX管理により、復旧用端末や外部メモリからウイルスが混入するのを未然に防ぐ。2. 広域需給調整公的機関や電力広域的運営推進機関(OCCTO)とのクラウド連携時、FR5(制限制御フロー)により、外部からの命令が「制御権限」を越えないよう監視。中〜高3. 再稼働・並入系統への再接続(並入)時、フィジカルAIが電力品質(周波数・位相)の異常を検知し、サイバー攻撃による系統崩壊(ブラックアウト)を阻止する。最大

結論:発電所における「サイバー・フィジカル・レジリエンス」

発電所におけるこの構成の最大の利点は、「人の判断が追いつかない極限状態での自動防御」にあります。

  • 静的防御(IEC 62443):
    ソフトウェアの脆弱性を突いた侵入や権限奪取を「論理的」に防ぐ。
  • 動的防御(フィジカルAI):
    侵入を前提とし、最終的な「物理的破壊」を物理法則に基づいて「強制的」に防ぐ。

この二段構えにより、地震や津波で物理的にダメージを受けた発電所が、サイバー攻撃という追い打ちを受けても、「致命的な全損」を回避し、最短ルートで供給力を回復できるようになります。

「災害直後の混乱」を守るだけでなく、その後の「復旧・再接続フェーズ」においてこそ、深層多層防御の真価が発揮されます。

災害復旧時には、平時では許容されない「特例的な通信」や「外部リソースへの依存」が急増します。この段階で防御能力を維持できる利点を、3つの具体的なシチュエーションで整理しました。

復旧プロセスにおける深層多層防御の3つの利点

1. 外部接続(クラウド・公的機関)の「汚染」からの隔離

復旧期には、サプライチェーンの調整や被害報告のため、工場のOTネットワークが急遽ITインフラや外部クラウドと連携を強めます。

  • 深層多層防御がある場合:
    IEC 62443に基づく「ゾーンとコンジット」が定義されていれば、外部とつながる「情報系ゾーン」が万が一サイバー攻撃を受けても、その影響を「制御ゾーン」や「安全計装ゾーン」に波及させません。
  • 利点:
    外部とのデータ連携を加速させつつ、生産ラインの核心部(PLCやSIS)の安全性は100%維持したまま復旧を進められます。

2. リモートメンテナンスとエンジニアリング環境の保護

被災地へ技術者が即座に駆けつけられない場合、リモートでの復旧操作やプログラム修正が行われます。

  • 深層多層防御がある場合:
    製品開発・エンジニアリング環境自体が多層防御で保護されているため、リモートアクセス経由で送り込まれる「復旧用パッチ」や「設定変更」が、改ざんされていない正当なものであることを保証(整合性確認)できます。
  • 利点:
    「復旧作業そのものが攻撃の踏み台になる」という最悪のシナリオを防止できます。

3. フィジカルAIによる「復旧時特有の誤操作」の検知

復旧作業中は、通常運転時とは異なる非定常な操作が連続します。

  • フィジカルAIの役割:
    焦りや疲弊によるオペレーターの誤操作、あるいは復旧に紛れた攻撃者による「過負荷をかける操作」を、AIが物理モデル(流体、圧力、電力負荷など)に基づいてリアルタイムでチェックします。
  • 利点:
    「制御機能」を落とさずに復旧を進める中で、物理的な限界を超える操作だけを確実にブロックし、二次災害を防ぎます。

まとめ:レジリエンスの本質

深層多層防御とは単なる「壁」ではなく、「システムの健全性を維持したまま、柔軟に外部とつながり直すためのフィルター」として機能します。

  1. IT/クラウド連携(情報の復旧)
  2. リモートエンジニアリング(機能の復旧)
  3. フィジカルAIによる監視(安全の担保)

これらが並行して動くことで、日本特有の複合災害リスク下においても、重要インフラを早期かつ安全に再稼働させることが可能になります。

災害復旧期におけるサプライチェーン全体のレジリエンスは、自社工場だけの防御に留まらず、「信頼の連鎖(Chain of Trust)」をいかに維持するかが鍵となります。

大規模災害時、原材料の調達先変更や物流ルートの再構築が急務となりますが、この「動的な変化」こそがサイバー攻撃者の絶好の標的となります。深層多層防御とフィジカルAIを広域で活用する意義を深掘りします。

1. サプライチェーン・レジリエンスの3つの柱

広域での復旧プロセスを安全に進めるためには、以下の3要素を統合したネットワーク設計が必要です。

① 供給網の動的再構成と「ゼロトラスト」

被災によりメインのサプライヤーが停止した場合、代替先との間で急遽システム連携(在庫確認や発注データ連携)が必要になります。

  • 深層多層防御の役割:
    代替サプライヤーのIT環境が十分でない可能性を想定し、接続ポイントにマイクロセグメンテーションを適用します。これにより、未確認の外部拠点からの接続であっても、工場の基幹制御系(OT)へ直接アクセスすることを物理的・論理的に遮断したまま、必要なデータ(生産計画など)のみを安全に交換します。

② 物流(ロジスティクス)とOTの同期保護

被災地への配送ルート確保のため、物流システム(IT)と工場の出荷管理システム(OT)が密に連携します。

  • リスク:
    物流管理サーバーを経由したランサムウェアの侵入。
  • 防御:
    IEC 62443-3-3に基づくセキュリティレベルの設定により、物流データ(IT)のパケットが制御コマンド(OT)として誤認されたり、悪用されたりしないよう、通信プロトコルのディープパケットインスペクション(DPI)を継続します。

③ フィジカルAIによる「広域整合性」の検証

原材料の成分データや供給量が、被災前後の物理的な生産能力と合致しているかをAIが監視します。

  • シナリオ:
    攻撃者がサプライチェーン管理システムを改ざんし、実際とは異なる原材料特性データを工場側に送り、製造プロセスで異常(爆発や不良品発生)を引き起こそうとする。
  • フィジカルAIの介入:
    投入される原材料の物理特性と、現在のプラントの稼働状態をリアルタイムで照合。シミュレーション上の理論値から逸脱していれば、上位システムからの指示であっても「製造実行の停止」を自律的に判断します。

2. 公的機関・クラウドとの「安全な共生」

復旧期には、政府や自治体の「災害対策本部」や「電力需給調整クラウド」との連携が不可欠です。

  • データの一方向制御 (Data Diode):
    工場の稼働状況や被害状況を公的機関へ送信する際、物理的な「一方向伝送デバイス」を用いることで、外部(クラウド側)からのサイバー攻撃が工場内に「逆流」することを物理的に不可能にします。
  • 認証の継続性:
    公的な通信インフラが不安定な状況でも、事前に配布された証明書ベースの認証(PKI)により、なりすましによる誤った復旧指示を排除します。

3. 日本型レジリエンスの全体像

日本企業が目指すべきは、下図のような「自律分散型」の防御モデルです。

階層役割災害・復旧時のメリットクラウド層広域の需給調整・情報共有サプライチェーン全体の最適化エッジ層(多層防御)工場・拠点の防壁外部の混乱(サイバー汚染)の遮断フィジカルAI層物理プロセス監視誤操作・悪意ある指令の「物理的」拒絶

結論:計装制御システムの「安全性」を落とさない復旧

災害からの復旧を急ぐあまり、セキュリティ設定を簡略化(バイパス)してしまうのが最大の弱点となります。しかし、IEC 62443に基づいた設計環境フィジカルAIが組み込まれていれば、「安全機能(Safety)」と「制御機能(Control)」を常に最優先に保護しながら、IT・クラウド側の「情報機能」を段階的に、かつ迅速に復旧させることが可能になります。

これは、単なる「防御」ではなく、「攻撃を受けている最中でも、災害復旧という本来の使命を遂行し続ける能力」と言えます。

IEC 62443-3-3の基本要件(FR: Foundational Requirements)を軸とした具体的な実装要件の整理は、非常に的確です。

深層多層防御の各要件項目は、単なる「壁」を作る防御ではなく、コンポーネントレベル(-4-2)からシステムレベル(-3-3)、さらには開発プロセス(-4-1)までを垂直統合した、「攻撃を受けても止まらない、あるいは安全に止まって即座に立ち直る」ための真の深層多層防御の構成要素です。

これらの要件が、災害復旧プロセスにおける「広域レジリエンス」の中でどのように機能し、特にサプライチェーン全体での「信頼の連鎖」を担保するか、FRの区分に沿ってその利点を整理します。

IEC 62443-3-3 FRに基づく復旧期の防御能力

災害復旧という「非定常な状態」において、各要件が果たす役割は以下のようになります。

1. 識別・認証管理(FR1)およびアクセス制御(FR2)

  • 要件:
    ユーザー管理、操作・承認権限、ネットワークインターフェース監視。
  • 復旧時の利点:
    混乱期には外部ベンダーや公的機関からのアクセスが急増しますが、最小権限の原則に基づき「復旧に必要なスコープ」のみにアクセスを制限します。これにより、サプライチェーン上の他社の被災・汚染が自社システムへ横感染することを防ぎます。

2. システムの完全性(FR3)およびデータ機密性(FR4)

  • 要件:
    マルウェア起動阻止、レジスタアクセス制限、SBOM/VEX管理。
  • 復旧時の利点:
    復旧用のパッチや設定ファイルを外部(クラウド等)から取り込む際、SBOM(ソフトウェア部品表)と照合することで、そのバイナリが正当なものであるかを検証できます。脆弱性情報(VEX)に基づき、リスクのある状態での再接続を未然に防ぎます。

3. 制限制御フロー(FR5)およびイベントレスポンス(FR6)

  • 要件:
    インシデント検知、ログ解析、情報管理。
  • 復旧時の利点:
    ネットワークが再構築される過程で、予期せぬ通信フローが発生していないかを常時監視します。物理的な被災状況とデジタルログを突き合わせることで、「物理的な故障」なのか「サイバー攻撃による異常」なのかを迅速に切り分け、的確な復旧判断を下せます。

4. リソースの可用性(FR7)

  • 要件:
    安全緊急処理優先、バックアップの完全確保、レジリエンス自動化。
  • 復旧時の利点:
    最も重要な項目です。制御機能よりも「安全機能(SIS)」を優先し、かつその安全機能自体がサイバー攻撃から保護されていることで、復旧作業中の誤操作や攻撃による「物理的な爆発・破損」という最悪の二次災害を物理法則レベルで回避します。

フィジカルAIとSBOM/VEX管理の相乗効果

特に、ご提示いただいた「SBOM管理」「フィジカルAI」の組み合わせは、日本の製造業・重要インフラにとって強力な武器になります。

  • 静的防御(SBOM/VEX):
    復旧時に使用するソフトウェアの「成分」を保証し、既知の脆弱性を持ち込まない。
  • 動的防御(フィジカルAI):
    稼働中の「挙動」を物理的に監視し、未知の攻撃やゼロデイ脆弱性を突いた攻撃であっても、物理的な異常として検知・遮断する。

この「静」と「動」の組み合わせにより、サプライチェーン全体が混乱している最中でも、自社の計装制御システムは「論理的にも物理的にも正しい状態」を維持して再稼働へ向かうことができます。

結論:日本型「多層・深層・広域」レジリエンス

このように、IEC 62443の厳格な要件定義に基づいたシステム設計は、平時のセキュリティ対策である以上に、「大規模災害からの安全かつ迅速な復旧」を支えるインフラそのものとなります。

  • 多層防御:
    境界と内部のセグメント化。
  • 深層防護:
    コンポーネント、メモリ、プロセスレベルの保護。
  • 広域レジリエンス:
    サプライチェーン・クラウド連携における信頼性の担保。

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このジャーナルに関するお問い合わせ

著者

株式会社ICS研究所 村上 正志

1979~90年まで、日本ベーレーのシステムエンジニアとして電力会社の火力発電プラント監視制御装置などのシステム設計及び高速故障診断装置やDirect Digital Controllerの製品開発に携わる。
*関わった火力発電所は、北海道電力(苫東厚真、伊達)、東北電力(新仙台、仙台、東新潟)、東京電力(広野、姉ヶ崎、五井、袖ヶ浦、東扇島)、北陸電力(富山新港)、中部電力(渥美、西名古屋、知多、知多第二)、関西電力(尼崎、御坊、海南、高砂)、中国電力(新小野田、下関、岩国)、四国電力(阿南)、九州電力(港、新小倉、川内)、Jパワー(磯子、松島、高砂)、日本海LNG など

1990年、画像処理VMEボードメーカーに移籍し、大蔵省印刷局の検査装置や大型印刷機械などのシステム技術コンサルティングに従事。

1995年、デジタルに移籍し、SCADA製品の事業戦略企画推進担当やSE部長を務める。(2004年よりシュナイダーエレクトリックグループ傘下に属す)また、1999年にはコーポレートコーディネーション/VEC(Virtual Engineering Company & Virtual End-User Community)を立ち上げ、事務局長として、「見える化」、「安全対策」、「技術伝承」、「制御システムセキュリティ対策」など製造現場の課題を中心に会員向けセミナーなどを主宰する。協賛会員と正会員のコラボレーション・ビジネスを提案し、ソリューション普及啓発活動を展開。
2011年には、経済産業省商務情報政策局主催「制御システムセキュリティ検討タスクフォース」を進言、同委員会委員及び普及啓発ワーキング座長を務める。
2015年、内閣官房 内閣サイバーセキュリティセンターや東京オリンピックパラリンピック大会組織委員会などと交流。

2015年、株式会社ICS研究所を創設。VEC事務局長の任期を継続。世界で初めて制御システムセキュリティ対策e-learning教育ビデオ講座コンテンツを開発。

2017年4月~ 公益財団法人日本適合性認定協会JABの制御システムセキュリティ技術専門家

2017年7月~ 経済産業省の産業サイバーセキュリティセンターCoEの制御システムセキュリティ講座講師担当

現在活動している関連団体及び機関
・日本OPC協議会 顧問
・制御システムセキュリティ関連団体合同委員会委員

〒160-0004 東京都新宿区四谷1-15
 アーバンビルサカス8 A棟2階